中級者向け実践:一般企業でのGASデータ処理・分析による四半期レポート自動化(中規模企業向け)
本記事では、一般企業の中規模組織における四半期レポート作成を、Google Apps Script(GAS)を用いて自動化する方法を解説します。対象読者は、GASの基本を理解しており、スプレッドシートやGoogle ドキュメントをある程度扱える中級レベルのユーザーです。四半期レポートの作成は、データの収集、分析、そして報告書の作成というプロセスを経て行われますが、これらの作業をGASで自動化することで、時間と労力を大幅に削減できます。
四半期レポート自動化の概要
四半期レポートの自動化では、主に以下のステップをGASで実行します。
- データ収集: スプレッドシートやデータベースから必要なデータを収集します。
- データ加工: 収集したデータを分析しやすい形に加工します。
- データ分析: 加工されたデータをもとに、必要な指標を算出します。
- レポート作成: 分析結果をGoogleドキュメントにまとめ、レポートを作成します。
- レポート配布: 作成したレポートを関係者にメールで配布します。
これらのステップを自動化することで、レポート作成にかかる時間を大幅に短縮し、より重要な業務に集中できるようになります。
データ収集の自動化
四半期レポートのデータソースは、スプレッドシート、データベース、外部APIなど、多岐にわたります。ここでは、スプレッドシートからデータを収集する例を示します。
function collectDataFromSpreadsheet() {
// スプレッドシートのIDとシート名
const spreadsheetId = "YOUR_SPREADSHEET_ID";
const sheetName = "売上データ";
// スプレッドシートを開き、シートを取得
const ss = SpreadsheetApp.openById(spreadsheetId);
const sheet = ss.getSheetByName(sheetName);
// データの範囲を指定(A2から最終行まで)
const lastRow = sheet.getLastRow();
const range = sheet.getRange("A2:C" + lastRow);
// データを取得
const data = range.getValues();
// 取得したデータをログに出力(デバッグ用)
Logger.log(data);
// 取得したデータを返す
return data;
}
このコードでは、指定されたスプレッドシートから売上データを取得し、Logger.log
で確認できるようにしています。YOUR_SPREADSHEET_ID
は、実際のスプレッドシートIDに置き換えてください。範囲はA2から最終行までとしていますが、実際のデータ構造に合わせて調整が必要です。
データ加工・分析の自動化
収集したデータは、そのままでは分析しにくい場合があります。そこで、GASを使ってデータを加工し、必要な指標を算出します。例えば、売上データを月ごとに集計する例を示します。
function aggregateSalesData(data) {
// 月ごとの売上を集計するオブジェクト
const monthlySales = {};
// データをループして月ごとに集計
data.forEach(row => {
const date = row[0]; // 日付データ
const amount = row[2]; // 売上金額
const month = date.getMonth() + 1; // 月を取得(1月が0なので+1)
// 月ごとの売上に加算
if (monthlySales[month]) {
monthlySales[month] += amount;
} else {
monthlySales[month] = amount;
}
});
// 集計結果をログに出力(デバッグ用)
Logger.log(monthlySales);
// 集計結果を返す
return monthlySales;
}
このコードでは、collectDataFromSpreadsheet()
で取得したデータを引数として受け取り、月ごとの売上を集計しています。日付データから月を抽出し、monthlySales
オブジェクトに売上金額を加算しています。集計結果は、Logger.log
で確認できます。
レポート作成の自動化
データ分析の結果をもとに、Googleドキュメントにレポートを作成します。ここでは、月ごとの売上データを表形式でドキュメントに挿入する例を示します。
function createReport(monthlySales) {
// ドキュメントのID
const documentId = "YOUR_DOCUMENT_ID";
// ドキュメントを開く
const doc = DocumentApp.openById(documentId);
const body = doc.getBody();
// テーブルを作成
const table = body.appendTable([["月", "売上"]]);
// 月ごとの売上データをテーブルに追加
for (const month in monthlySales) {
const sales = monthlySales[month];
table.appendRow([month, sales]);
}
// ドキュメントを保存
doc.saveAndClose();
// ドキュメントのURLをログに出力
Logger.log(doc.getUrl());
}
このコードでは、指定されたドキュメントに月ごとの売上データを表形式で挿入しています。YOUR_DOCUMENT_ID
は、実際のドキュメントIDに置き換えてください。appendTable
とappendRow
を使って、テーブルを作成し、データを追加しています。作成されたドキュメントのURLは、Logger.log
で確認できます。
レポート配布の自動化
作成したレポートを関係者にメールで配布します。ここでは、ドキュメントのPDFファイルを添付してメールを送信する例を示します。
function distributeReport(documentId) {
// メール送信先
const recipients = "recipient1@example.com,recipient2@example.com";
// ドキュメントをPDFとして取得
const doc = DocumentApp.openById(documentId);
const pdfBlob = doc.getAs("application/pdf");
// メールの件名と本文
const subject = "四半期レポート";
const body = "四半期レポートが完成しました。添付ファイルをご確認ください。";
// メールを送信
GmailApp.sendEmail(recipients, subject, body, {
attachments: [pdfBlob],
name: "四半期レポート自動送信システム"
});
// 送信完了をログに出力
Logger.log("レポートを送信しました。");
}
このコードでは、指定されたドキュメントをPDFファイルとして添付し、指定された宛先にメールを送信しています。recipients
は、実際のメールアドレスに置き換えてください。GmailApp.sendEmail
を使って、メールを送信しています。
応用例と活用シーン
- 複数スプレッドシートからのデータ収集: 複数のスプレッドシートからデータを収集し、統合して分析できます。
- データベースとの連携: Google Cloud SQLなどのデータベースからデータを取得し、分析に利用できます。
- 外部APIとの連携: 外部APIからデータを取得し、レポートに組み込むことができます。
- レポートのカスタマイズ: グラフや図を挿入したり、書式設定を調整したりして、レポートをより見やすくすることができます。
- スケジュール実行: トリガーを設定して、四半期ごとに自動的にレポートを作成・配布することができます。
まとめ
本記事では、Google Apps Script(GAS)を用いて、四半期レポート作成を自動化する方法を解説しました。データ収集、データ加工・分析、レポート作成、レポート配布の各ステップをGASで自動化することで、時間と労力を大幅に削減し、より重要な業務に集中できるようになります。今回紹介したコード例を参考に、ぜひ四半期レポートの自動化に挑戦してみてください。